カテゴリー「■B6 - イギリス・ドイツ」の記事

2009.10.27

ケルンの交通政策

居心地の良かったロンドンを離れて、ふらっとドイツのケルンにやってきた。
この街で一番注目したのが、その交通政策だ。

Chari_2 まず、左の写真のような自転車専用レーンがある通りがあった。道路の一番外側が歩道、その一つ内側が自転車専用レーン、その内側が車道になっていた(ちなみにドイツは右側通行です)。

歩いてみると、車も自転車も多い大通りだというのに実に歩きやすい。安全な歩道が確保されているので、車や自転車が怖くない。だから、安心して周囲をキョロキョロしたり、立ち止まって写真を撮ったりできる。






Chari2

私が住んでいる京都の街中の交通政策は、正直なところ出来が悪いと思う。

ただでさえ道が狭いのに、自転車、歩行者との棲み分けルールが定まっていないので、車を運転すれば車道に出っ張って走る自転車が怖いし、自転車で走れば路肩に停車中の車を避ける際に背後から車にひかれないように充分注意が必要だし、歩けば背後から自動車に迫られ、歩道でも正面から自転車が突っ込んでくる。

それだけに、ケルンで見たこの棲み分けルールは素晴らしいと感じた。


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そしてもう一つ注目したのが路面電車(LRT)だ。

この路面電車は、地下鉄や高架の駅と違って電車に乗るのに階段の上り降りが不要なうえに、中心部にはバス停のようにくまなく駅があるので、とても快適に移動ができた。その意味ではまるでバスなのだが、バスよりも乗り心地は快適だし、本数も多いし、専用レーンがあるので交通渋滞に巻き込まれないのが良い。ホームも広いので、待ってる間に窮屈な思いもしなくていい。実に使い勝手が良かった。

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この路面電車には、自転車やペットの持ち込みもできる(ただし自転車は少し追加料金が必要)。

さすがに市内のど真ん中には線路を敷設するスペースがなかったようで、電車は地下を走っていたが、この路面電車がそのまま地下に入って地下鉄となる。無駄がなくていい。

ある街が居心地の良い街かどうか。その判断にあたり重要な地位を占めるのが歩いて楽しいかどうかという点だ。そして、それには充実で快適な公共交通網とその安全性というのが必要条件となる。ケルンはこの点で優れていたと思う。




#以下、市内のスナップ写真です。

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2009.10.16

ロンドンの都市景観(2)

London

前回に引き続き、ロンドンの都市景観の話です。

ロンドンの街中には電線と電柱がない。これがロンドンの都市景観が優れている二つ目の理由だと思う。

London2

電線は地中に納められている。ロンドンの電線の地中化率はほぼ100%だ。


London3 電線の地中化の施策は景観を目的に導入されたものではなく、1800年代に都市犯罪が増加する中で道路に街灯を設置する必要があり、その際ガス灯会社と電灯会社の競争を公平にするために、電線もガス管同様に地中に納めることを義務付けたものだ。

しかしながら都市景観の上の利点もあり、電柱が道路の邪魔をしないので交通政策上の利点もあり、また災害時に電柱が倒れたり火事になったりする危険を予防するという防災上の利点もある。なかなかいいことだらけなのだ。

電線の地中化は日本でもゆっくりと推進されていて、ここ京都・伏見でも酒造エリアの一部に導入されている。外観が実にすっきりしていて良い→こちらへ(※その後の調べで、この写真の場所は電線を地中化したのではなく裏側からひいて見えないようにしているだけかもしれないことが判明)



ロンドンの都市景観が優れている三つ目の理由は、都市にある大きな公園とたくさんの街路樹だ。

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実は、ロンドンの中心部にはそれほど緑が多いわけではなかった。ビジネス街やショッピング街は建物でいっぱいだし、街路樹のない狭い道も多いし、建物の窓やベランダにプランタや植木鉢が置かれた光景もそれほど目にしなかった。

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だがそれを補うかのように、街中に巨大な公園がたくさんあった。ハイドパーク、グリーンパークなどがそれで、いつでも気軽に足を運んで、木々を眺めたり、芝生に寝転んだり、日向ぼっこをしたり、動物と戯れたり、スポーツを楽しんだりできる巨大な空間が街中にある。

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そして大通りには必ず街路樹が植えられている。これらの木々は電線を気にすることもなく大きく成長して、心地よい散歩空間を演出している。木の種類はもっぱら広葉樹で、カナダ国旗にあるようなギザギザのある大きな葉をつけたメイプルが多かったように思う。

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都市景観に関しては、我々はロンドンから学ぶものが多くある。

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2009.10.13

ロンドンの都市景観

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夏目漱石はロンドンに留学してその文明の偉大さにノイローゼになったという。それから既に百数十年が経過し、日本は充分すぎるほどの先進国になった。が都市景観に限っていえば、今回の滞在中、私はロンドンの偉大さに圧倒され続け、羨望を禁じ得なかった。ロンドンの街並みがどこまでも美しかった。宮殿や教会が美しいのは当然だが、都心部も、やや郊外も、中産階級が住むエリアもやっぱり美しかった。

以下の写真はどこにでもあるような街角でのスナップ。

London

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これで人口720万人の大都市の街並みなのだから驚く。そうして日本の都市を顧みるとき、少し残念な気持ちになる。京都は東京界隈に比べれば景観はマシな方だが、それでもロンドンと比べれば足元にも及ばないだろう。

実に美しく、そして歩きやすい。だから歩いていて楽しいのだ。いったい何が違うんだろう?

London3その答えの一つは建造物の統一感だ。

ロンドンの住宅や建造物の多くはレンガ造りだ。この建材の外観上の良いところは、重厚感と色の統一感(赤、茶、黄などいろんな色のレンガがあったがみな暖色調だ)があって、経年劣化が少なくむしろ時代とともに良い風合いを出していくことだろう。

むろん、お金があるところの街並みは相対的にどこでも美しい。差が出るのはそれほどお金がないところの街並みだ。上に掲載した中産階級の新興住宅地と移民の多く住む団地の写真は、決して金持ちエリアではないがやはり美しい。

ロンドンには長屋形式のアパートメント、いわゆるテラスハウスが多くあった。4階建ての大きな建物が各4メートルくらいで区切られてそれぞれに扉一枚の玄関があり、半地下にキッチンと洗濯場、1階から上は各階1-2個の部屋と階段、という縦長のスタイルが一般的だ。これも富裕層の住居ではない。それでいてこの長屋の景観が美しいのは、外観デザインを周囲と合わせて統一しているからだ。多くの場合はレンガ造りで、そうでない場合でも白のペンキできれいに塗っている。こうして統一感を出すことで、都市景観が落ち着いたものになっている。

街をぶらぶら歩いていて、建物の再建築の現場を見ることができた。見ての通り、外側の壁一枚を残して、後ろは全て新築している。それでも外壁は残すのがロンドン人の心意気だ。

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都市の住居のように間口が狭い家が並ぶ地域の景観を安定させるには、隣近所とデザインを揃えて統一感を出すと良い、と都市デザインの専門家はいう。ロンドンはその好例だと思う。日本の都市景観は残念ながらその正反対かもしれない。サイドパネルの家、タイル張りの雑居ビル、コンクリート打ちっぱなしのポストモダン風の家、モルタルの家、町家風の家などが群雄割拠している。

この話、続きます

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2009.10.05

いるか日時計

グリニッジ天文台の中庭で面白いものを見つけた。

Dolphin

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二頭のいるかが口にくわえているのは時刻盤。二頭の尾の交点がその時刻盤に影を落としている。そう、これは日時計だ。 かっこいい!なんて素晴らしい! Christopher St. J.H. Daniel という日時計デザイナーが設計したそうです。

この写真は9月19日の12時55分頃撮影したもの。

では機能の方はどうだろうか? 外見の美に比肩するほどの機能美を持っているかどうか、文字盤を解析してみよう。

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文字盤は横長の長方形が湾曲したかたちになっており、下部に左から順に9、10、11、12、1、2,3,4,5の数字が刻まれている。これは時刻だろう。横軸は時刻表示だ。各数字の間が5本の縦線で6等分されているので、この線は10分刻みの線だ。

この縦線が直線ではなくて逆S字型に歪んでいるのが気になったが、視太陽時と平均太陽時の均時差を踏まえて、いつでも正確な平均太陽時を表示できるように目盛りを入れたらこうなったようだ。日時計が平均太陽時を表示できるとは驚いた。写真では二頭のいるかの尾の交点が1の曲線(13時)のやや手前に影を落としている。うん、ぴったり合っている(下部注記も参照)。

Dolphin3 長方形の縦は、太陽の高度変化に対応したものだろう。縦軸は季節(月日)表示だ。太陽が高い季節は時刻盤の下部に影が落ち、低い時期は上部に影が落ちる。つまり、夏至のときに影は下辺あたりに落ち、冬至のとき影は上辺あたりを推移するのだろう。撮影日の9月19日は秋分の日の数日前なので、影は時刻盤のほぼ真ん中を左から右に推移していくはずだ。ビンゴ!

ところで普通日時計は、日時計が設置されている場所の経度と、その地に通用している標準時の基準地の経度(日本なら東経135度の明石)との差があるため、時刻を正確に表示しようとすると12時が真ん中に来ない。経度のずれの分、12時線を真ん中から左右どちらかにずらす必要があるからだ。だがこのいるか日時計はイギリス標準時のグリニッジにあるので、そのずれも発生しない。

つまりこの日時計は、均時差の問題も経度差の問題もクリアした、完璧な時計ということになる。これってすごいんじゃないか?

なんてことを考えながら時刻盤を眺めていると、中央の数字が12じゃなくて1になっていることに気がついた。え?なんだこれ? ということは真南を向いてないのか? いや、そんなことはない。ちゃんと南を向いている。真ん中は真南の線だ。影がこの上を通るときが南中で12時というのがそもそも時計の考え方だ。今、ちょうど影が真南の線のあたりにあるから、時刻は12時だよな、と腕時計を見ると13時前。日時計の時刻盤を見ても13時前。 ??? わけがわからん。

と30分くらい日時計の前で悩んだだろうか。

「!」

そうだった、今はサマータイムだった。イギリスは3月最終日曜日から10月の最終日曜日まで夏時間で時計を1時間早く進めているのだった。ということは、現時刻は本来は12時前だけど、サマータイムだから13時。

Dolphin4 謎が解けてほっとしたが、次の疑問が生じた。「なぜデザイナーは12時を真ん中にしなかったんだろう?」 12時を真ん中にした方が素直だし、美しい。サマータイムの問題は横に注釈でもつけておけばいいだけだ。

これは推測だが、もしかしたら閲覧人数の大小で決めたのかもしれない。サマータイムの期間はおよそ7カ月あって通常時間よりも長いし、観光客は暖かい4-10月の方が11-3月よりも多いだろうから。

しかしながら、ここは東経0度、グリニッジ子午線だ。世界の時刻の基準点だ。そこにある唯一の日時計が、サマータイムで作られているのは大いに残念だった。デザインもこんなに素晴らしいのに、画竜点睛を欠いた。なんてもったいない!

※注記
その後ネットを調べていたところ、こちらのページに、この日時計の時計盤は夏至と冬至に年2回入れ替えると書かれてあった。たしかに入れ替えるなら均時差の補正はより正確になると思うが、サマータイム期間は夏至→冬至ではないので、夏至と冬至に入れ替えても時刻表記は間違ってしまう。また、写真を見ると設置場所が微妙に違う。移動したけど同一物なのか、別モノなのか、時計盤を入れ替えるとしたらいつ、何回入れ替えるのか、まだ疑問は残ります。

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2009.10.04

グリニッジ天文台 - Royal Observatory, Greenwich

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 世界に名だたるグリニッジ天文台。さぞ巨大な望遠鏡が中央に据えられて威張っているだろうと思って行ったところ、見事な肩すかしにあった。国の天文台の主要機能はケンブリッジをはじめ各所に移されていて、グリニッジは博物館併設の学習施設・観光施設になっていた。一応口径28インチ(約71cm)の望遠鏡はあるのだが、ハワイにある日本のすばる望遠鏡が口径8.3mという時代なのであまりありがたみがない。建物も住宅のような建物が二つとプラネタリウム館があるくらいで、意外に質素だった。上の写真は天文台周辺を遠くから見たところ。

 入口にはグリニッジ標準時を示す24時間時計がありました。

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 これがグリニッジ子午線。東経0度。もちろん西経も0度。このステンレスが埋め込まれた直線が、世界の時刻の基準となっている線です。

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 ここでは線をまたいで写真を取るのがお約束なのだけど、けっこうな人が並んでいたのでパス。他人をこっそり写してきた。

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 こちらの建物はフラムスティードハウスと言って、初代王立天文台長となった天文学者ジョン・フラムスティードが住んだ家を博物館にしたもの。屋根の上の赤い玉は時報代わりで、1833年以来毎日、13時にこの玉を落として周囲に時刻を知らせているらしい。

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 フラムスティードハウスの中は博物館になっていた。でも展示物は望遠鏡ではなくて、意外にも時計がメイン。中でも、ジョン・ハリソンがその生涯をかけてやっとのことで製作した航海時計『H-4』と、その先行機『H-1』『H-2』『H-3』の四台の時計が中央に鎮座していた。天文台の博物館の中央に航海時計が展示されているというのが、経度測定競争において時計が月距法に勝利したことを象徴しているようで面白い。

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※写真はNational Maritime MuseumのHPより転載させていただきました。メカニズムの説明もこちらにあります(英語)。

#ついでにこちらはこの界隈にあったマリングッズのお店。キャッチコピーは「First Shop in the World!」。西経0度0分4秒だそうです。

Firstshop

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2009.10.03

グリニッジ紀行 ~経度測定史

Greenwich 少し時間に余裕ができたので、9月下旬に約二週間、イギリス・ドイツを旅してきた。今回の旅の一番の目的はロンドンのグリニッジにある、天文台と海事博物館。グリニッジで大航海時代に思いをはせようという狙いだ。天文台と大航海、一見何の関係もないようだが、一点を通じて実は密接な関係にある。その一点とは、地球の経度(Longitude)測定だ。

巨万の富を大英帝国にもたらしたアジアやアフリカや新大陸への大航海だったが、その一方で航海は常に危険と背中合わせだった。例えば1707年にはアソシエーション号のシャベル提督以下乗組員2000名がシリー諸島で座礁して亡くなった。1741年にはアンソン提督率いるセンチュリオン号が嵐の中で寄港地を見失い、右往左往してる間に数百名の部下が壊血病で亡くなった。こうした海難事故がおこるのは、船の現在地がわからないからである。

すなわち、航海中の船の現在地の緯度経度が分かれば、海図を参照しながら、暗礁を避けるのも寄港地に立ち寄るのも容易い。が、現在地の緯度は太陽や北極星の高度を測ることで把握できるものの、経度を把握する方法がなかった。

Longitude 経度というのは基準点(例えばロンドンのグリニッジ)との時差線で、例えば船の上で太陽が南中したときにグリニッジでは15時だということがわかれば、太陽は1時間に15度進むので(360度÷24時間)、船はロンドンより西に3時間分=西に45度の場所にいることがわかる。つまり、正確な時計があれば経度はわかる。だが、温度も湿度も行く先々で大きく変化し、揺れも激しい船上で、正確性を保ち、しかも絶対に止まらない時計は存在しなかった。

そこで海難事故をなんとかしたいイギリスは、1714年に経度法という法律をつくった。これは経度を正確に測定できる方法を発明した者に賞金を出すという法律で、一等賞金は国王の身代金相当額というのだから、その真剣度がわかる。

たくさんのアイデアの中で、一番有力だったのは月を時計代わりに使う「月距法」というものだった。これはグリニッジなど基準地における天体観測データを膨大に収集し、将来の動きも予測して、表(いわゆる航海暦)にして船乗りに持たせておいて、船乗りはその土地の月と太陽(夜なら明るい恒星でもいい)の距離を測り、手元の時計と航海暦で同じ距離を示すグリニッジの日時を比較するという方法だ(手元の時計は南中時に合わせておくのだろう。数時間程度であれば誤差はそれほど問題にならないないと思われる)。これで時差がわかり、経度を算出できる。月は地球上どこからでも見えて、時には昼でも見えるし、割と早いスピードで動くので細かな時間も測れる、というのがポイントのようだ。ただ、航海暦の作成には長年にわたる膨大で正確な天体観測データが必要なので、その為の観測の手間は並大抵のものではない。実はグリニッジ天文台も、この目的のための天体観測所として作られたのだという。宇宙の仕組みを探るのではなく、航海に役立てるという非常に現世的な目的で天文台が作られているのが面白い。

ふう、ようやく、グリニッジ天文台と大航海がつながった。

John_harrison_uhrmacher 他方で、長い航海にも耐えうる精度の高い時計の開発、というアプローチを取った者もいた。この中心人物が無名の時計技師、ジョン・ハリソン。こうして月距法と航海時計の開発競争のドラマが約100年にわたって続く。

実はこの辺のお話は『経度への挑戦』(デーヴァ・ソベル著、翔泳社刊)という本に詳しくかかれており、私の旅もこの本に触発されたところが大きい。この分野の話が好きな方にはぜひ一読をお勧めする。海外では映画にもなってます。

では、前置きが長くなったけど、次回は現地レポートを。

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