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2009.10.03

グリニッジ紀行 ~経度測定史

Greenwich 少し時間に余裕ができたので、9月下旬に約二週間、イギリス・ドイツを旅してきた。今回の旅の一番の目的はロンドンのグリニッジにある、天文台と海事博物館。グリニッジで大航海時代に思いをはせようという狙いだ。天文台と大航海、一見何の関係もないようだが、一点を通じて実は密接な関係にある。その一点とは、地球の経度(Longitude)測定だ。

巨万の富を大英帝国にもたらしたアジアやアフリカや新大陸への大航海だったが、その一方で航海は常に危険と背中合わせだった。例えば1707年にはアソシエーション号のシャベル提督以下乗組員2000名がシリー諸島で座礁して亡くなった。1741年にはアンソン提督率いるセンチュリオン号が嵐の中で寄港地を見失い、右往左往してる間に数百名の部下が壊血病で亡くなった。こうした海難事故がおこるのは、船の現在地がわからないからである。

すなわち、航海中の船の現在地の緯度経度が分かれば、海図を参照しながら、暗礁を避けるのも寄港地に立ち寄るのも容易い。が、現在地の緯度は太陽や北極星の高度を測ることで把握できるものの、経度を把握する方法がなかった。

Longitude 経度というのは基準点(例えばロンドンのグリニッジ)との時差線で、例えば船の上で太陽が南中したときにグリニッジでは15時だということがわかれば、太陽は1時間に15度進むので(360度÷24時間)、船はロンドンより西に3時間分=西に45度の場所にいることがわかる。つまり、正確な時計があれば経度はわかる。だが、温度も湿度も行く先々で大きく変化し、揺れも激しい船上で、正確性を保ち、しかも絶対に止まらない時計は存在しなかった。

そこで海難事故をなんとかしたいイギリスは、1714年に経度法という法律をつくった。これは経度を正確に測定できる方法を発明した者に賞金を出すという法律で、一等賞金は国王の身代金相当額というのだから、その真剣度がわかる。

たくさんのアイデアの中で、一番有力だったのは月を時計代わりに使う「月距法」というものだった。これはグリニッジなど基準地における天体観測データを膨大に収集し、将来の動きも予測して、表(いわゆる航海暦)にして船乗りに持たせておいて、船乗りはその土地の月と太陽(夜なら明るい恒星でもいい)の距離を測り、手元の時計と航海暦で同じ距離を示すグリニッジの日時を比較するという方法だ(手元の時計は南中時に合わせておくのだろう。数時間程度であれば誤差はそれほど問題にならないないと思われる)。これで時差がわかり、経度を算出できる。月は地球上どこからでも見えて、時には昼でも見えるし、割と早いスピードで動くので細かな時間も測れる、というのがポイントのようだ。ただ、航海暦の作成には長年にわたる膨大で正確な天体観測データが必要なので、その為の観測の手間は並大抵のものではない。実はグリニッジ天文台も、この目的のための天体観測所として作られたのだという。宇宙の仕組みを探るのではなく、航海に役立てるという非常に現世的な目的で天文台が作られているのが面白い。

ふう、ようやく、グリニッジ天文台と大航海がつながった。

John_harrison_uhrmacher 他方で、長い航海にも耐えうる精度の高い時計の開発、というアプローチを取った者もいた。この中心人物が無名の時計技師、ジョン・ハリソン。こうして月距法と航海時計の開発競争のドラマが約100年にわたって続く。

実はこの辺のお話は『経度への挑戦』(デーヴァ・ソベル著、翔泳社刊)という本に詳しくかかれており、私の旅もこの本に触発されたところが大きい。この分野の話が好きな方にはぜひ一読をお勧めする。海外では映画にもなってます。

では、前置きが長くなったけど、次回は現地レポートを。

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