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2008.12.25

さそり座の月にさそり座が見えないわけ

Scorpius_2 私は11月生まれのさそり座だ。だからさそり座は私の守護星で、11月になるとさそり座が天高くから私を温かく見守ってくれるんだろう、そう思っていた。だが小学生の後半くらいの時だろうか、さそり座というのは夏の星座で、11月の夜空には輝かない星座だということを知った。じゃあなんで11月生まれがさそり座なんだろう。その疑問は解決しないまま、いつしか忘れ去られていた。

そしてそれから20年ほどが経過した2008年4月、この謎が解けた。そのきっかけとなったのは、タイの新年を祝う水かけ祭り、ソンクラーン祭だった。その経過は以前こちらこちらにまとめたが、タイ王国という西洋占星術とは一切関係がなさそうな場所で、予期せず出会ってしまったところが面白い。

さて今日は、この「さそり座の月にさそり座が見えない理由」について、もう少し一般的に言うと、西洋占星術の「~座」と夜空の実際の星座の関係について、整理しておくことにした。

1.    黄道十二宮という概念

 まず、「私は11月x日生まれだから、さそり座です」というのは混乱を招く間違った表現で、正しくは「天蝎宮です」と言わなければならない。夜空に浮かぶ実際の星座であるさそり座と、黄道十二宮という抽象概念の一である天蝎宮は別物であることが理解への第一歩だ。

Zodiac12_2 黄道十二宮というのは天球上の太陽の通り道(黄道)を、白羊宮から双魚宮までの12のエリアで均等に割った概念だ。360度を12で割るのだから、それぞれの宮が30度ずつ受け持つことになる。白羊宮は黄道0度~30度、次に金牛宮は30度~60度、8番目の天蝎宮は210度~240度までだ。それぞれの宮の名前は、その位置にあったそれぞれの星座から付けられた。そして、占星術でいう「xx座」、正しくは「xx宮」というのは、その時期にその宮に太陽がある時期のことをそう呼んでいる。現代では3月21日頃~4月20日頃までの間は太陽が白羊宮にあり、4月21日頃~5月22日頃までは金牛宮に、10月24日頃~11月22日頃までは天蝎宮にある(トロピカル方式の場合。詳細は省略)。

 太陽があるということはその明りで星が見えないということであり、とすると太陽が天蝎宮にある時にさそり座が見えないのはむしろ当然だ。子供の頃思っていた「さそり座の月にはさそり座が見えるはず」という考えは、黄道十二宮の意味を知らない子供の発想だったわけだ。むしろ11月によく見えるのは、黄道十二宮を円で描いた時に、天蝎宮の対面側にある宮の星座群ということになる。

 ただし、ちょっと注意が必要なのは、黄道十二宮が整えられたプトレマイオスの時代から既に千数百年が経過しており、地球の歳差運動により、当時は4/14頃にあった春分点が現代では3/21頃になっている。黄道十二宮(トロピカル方式)では春分点に合わせて十二宮をずらした結果、「宮」ともとの星座の場所とは24日分ほどずれてしまった。だから実際には、太陽が天蝎宮にある時(10月24日頃~11月22日頃)、その場所にある星座は本来あるべきさそり座ではなくておとめ座やてんびん座である。同様に、対面にある金牛宮の真夜中の南の空の星座は、おうし座よりはおひつじ座である時期が長い。

2.    観測時刻との関係

 さて、実際の天蝎宮の時期(10月24日頃~11月22日頃)の夜空をFarSkyという天球シミュレーションソフトを使って見てみる。これは無料でダウンロードできる素晴らしく出来の良いソフトである。なお観測地点は京都市としたが、東京でも大差ないだろう。

Farsky_3  天蝎宮期間の真ん中である11月8日の0時0分の夜空には、西の空にうお座、南の空に おひつじ座とおうし座、東の空にふたご座が浮かんでいる。これは前節の末尾に書いた内容とぴったり合っていて、理論から導いた結論と現実が合致していて嬉しい。

 真夜中に夜空を眺める人はあまり多くはないので、11月8日の20時の夜空で見てみると、西の空にはやぎ座、南の空にみずがめ座とうお座、東の空におひつじ座がある。0時の夜空と比べてみると、20時には東の空にあったおひつじ座が0時には南の空へ、20時には南の空にあったうお座が西の空へ、それぞれ移動していることがわかる。

 11月9日の朝4時の夜空では、西の空におひつじ座とおうし座、南の空にふたご座、東の空にかに座としし座がある。0時からさらに4時間分(60度)、西に動いたわけだ。期待どおり、太陽が天蝎宮にあるこの時期には、夜空を一晩中眺めてもさそり座を見ることはできない。さそり座は地平線のむこうだ。

Scorpius2_3 では逆にさそり座はいつ見れるのか。これもFarSkyを使ってシミュレーションしてみると、6月1日に深夜0時0分に真南の空に浮かぶ。これは天蝎宮の時期(10月24日頃~11月22日頃)から、ちょうど半年+24日後の時期になっていて理論値と合う。夏が深まっていくにつれさそり座が空に浮かぶ時間も早まっていき、7月1日には19時頃には南東の空にあり22時に真南に、8月1日には19時頃には南の空の地平線すれすれに顔を出し、20時に真南に浮かぶ。7月、8月は23時、24時ごろまで夜空にある。夏にはよく見えるわけである。9月も終わり頃になると、19時頃に西の空にあるが、すぐに沈んでしまう。夜空にオリオン座が目立つようになったら、しばらくは潜伏期だ。実際には日中に空に出ているのだが、明るくて見えないのだ。そして次に再び夜空に顔を出すのは2月初旬頃で、早朝の5時に東の空の水平線上ぎりぎりに顔を出す。それから6月くらいまでの間は、もっぱら夜中から早朝にかけて見ることができるが、この時間に起きている人は多くはないだろう。その意味で、さそり座は夏に一番よく見える星座と言っていいだろう。

 以上、まとめると、さそり座の月の夜空にさそり座が見えないわけは、まずは天蝎宮という黄道十二宮の概念上、さそり座と太陽の位置とが重なる(24日分ずれているがそれでも近い)からであり、夏の星座と言われるわけは、観測時刻との関係で夏に人の目に触れることが多いからである。とまあ、こういうわけでした。

※さそり座の画像をこちらのサイトからいただきました。

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