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2007.11.12

父系制と母系制

Nouson 文化人類学上の用語で、父系制(父系社会)母系制(母系社会)というのがある。その社会の社会構造が、父方の家系を中心に出来上がっているのか、母方の家系を中心としているのか、による区別だ。具体的には、以下のような要素がものさしになるようだ。

  • 出自・血筋のたどり方
  • 地位の継承
  • 財産の相続
  • 結婚後の夫婦の居住場所

戦前日本の「家制度」は典型的な父系制だ。現在でも日本は、名字、お墓、親族関係など、どちらかといえば父系的な社会だ。

タイは母系的だ。

伝統的にタイの農村では、結婚後カップルは嫁方の実家のすぐ近くに家を構えてもらって住む。日本風にいえば婿を取るような感じだ。つまり、代々娘の系譜を通じて、文化が継承されていく。Taue

親族関係については、この暖かい土地では農作業は過酷なものではなく、人口に比して土地も有り余るほどあったので、あまり家族や親族で固まる必要はなく、おおらかななものであったようだ。この点は、一族間で固まってしかも本家と分家で主従関係さえできてしまう日本の武家社会や、華人社会における一族の絆のようなものとは全く異なる。

面白いのは、親の面倒を誰が見るのかという点。日本の家制度では家督を継いだ長男とその嫁の役割になるわけだが、タイではそれは末娘と婿の役割だ。この風習は現在でも残っていて、末娘が結婚する際には、親の近くに住めるかどうかというのもとくに重要な要素になるらしい。日本の家制度が長子、しかも男を中心としているのに対し、伝統的なタイの家族制度は末子、しかも娘が中心、と対極にあるところが面白い。

財産の相続についてはまだ調査不足なのだが、現在においては、子供たちの間で平等に分配される。

名字については、結婚後は男性姓に変えるのが一般的だ。この点は父系制的に見えるのだが、名字は近代以降西洋文化を真似して創設したもので、それまではタイ人の多くは名字を持たなかった。現在でも名字を使うのは役所の書類くらいで、社会生活上重要な役割を果たしていない。日常では圧倒的にニックネーム(チューレン)だ。次いでファーストネーム。友人の名字を知らないというのも珍しくない。

とまあ、タイの農村は伝統的にこんな母系制だ。日本とタイ、共に稲作文化の国なのに、このように違った展開をしてきたところが面白い。

なお、父系制だから父権的(男の権力が強い)、母系的だから母権的、とは必ずしもならない。母系的な社会でも、権力は男性が握っているケースも歴史上多々ある。

タイの場合、家庭の中では伝統的に男性が威張っているようだが、女性の社会進出が進んでいるため経済力は女性が持っている場合も多く、私の感覚的には、6対4で女性の方がやや優位な気がする。

※写真はイメージです。
※2007/12/15一部訂正。

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