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2007.10.06

歴史の「事実」と文献史学と考古学 

Heijo 「ナント見事な平城京」「イイクニツクロウ鎌倉幕府」。こうして私も日本の歴史を教わってきたが、教科書の著者とてこれらの歴史的事実を見てきたわけではない。じゃあなぜこれらが事実だと断言できるのだろう?

こうした歴史的事実の認定は、主として文献によっている。こうした文献を中心に歴史的事実を探る学問を文献史学という。もちろん教科書に載るまでには、さまざまな角度から検証が加えられ、一定レベルの確度は確保されているのだろう。

文献史学の弱点は、文献が少ない時代や、そもそも文字がなかった時代の歴史の事実認定には限界があることだ。たとえば日本の古代史もそうで、古事記、日本書紀、あるいは魏志倭人伝などによるわけだが、時の権力者が自分に都合のいいように歴史を書き換えたり、他の歴史書を焼却したりするのはよくあることだ。

こうした空白を埋めるのは、古代史レベルなら考古学の役目だ。さらに古い時代のことなら、地質学、生物学、気候学、天文学などが活躍する。

さてその考古学は、遺跡や歴史的建造物を切り口に当時の人間生活を探っていくわけだが、たとえば遺跡を発掘したとして、その遺跡が建造された年代をどうやって調べるのだろうか? 年代測定にはいくつかの方法があるが、その中でももっともメジャーなものの中の一つが、炭素年代測定法だ。

Tanso14私なりに理解したところでは、炭素年代測定法は、通常の空気中の 炭素14の濃度と、発掘物に含まれる炭素14の濃度の差を利用する。炭素14というのは半減期が約5730年の放射性物質で、普通に空気中に存在し、光合成をしている植物にも、その食物連鎖の上位にある動物の体内にも同濃度で含まれている。半減期というのは、放射性物質が崩壊して濃度が半分になるのにかかる時間のことだ。生物は生きている間は常に大気からの供給を受けているため、概ね大気に含まれるのと同じ濃度の炭素14を有しているが、死ぬと新たな供給がなくなるため、炭素14は崩壊する一方で、濃度はどんどん薄くなっていく。そこで、発掘物に含まれる炭素14の濃度を調べれば、何年前に炭素14の供給が止まったのか、すなわち、植物ならいつ光合成を止めたのかがわかるわけである。

Yayoijar 例えば土器は土(粘土)から作るわけだが、土には枯れ草や種子も含まれるため、それらに含まれる炭素14の濃度を調べることで、それらの製作年がわかるわけだ。木像の仏像などの年代測定も同じだが、もっとも仏像の製作に枯れ木を利用した可能性もある点には注意しなくてはいけない。例えば弥生時代の開始時期のように、この手法を使って検証した結果、それまでの通説が変更を迫られる場合も少なくない。

歴史上の人間の生活の解明という非常に文系的な学問課題に対し、放射線物質の測定という非常に理系的な手法を使ってアプローチしている点が面白い。

話を歴史の教科書に戻すと、教科書においては、歴史の「事実」は教えても、何を根拠にその事実を認定したかという点についてはほとんど触れられない。しかしながら、歴史の「事実」は新しい資料の発見により大きく変更を迫られることもあるわけだ。ただの「事実」の暗記ではなく、論理的思考力を鍛えるという意味でも、少なくても高校レベルの歴史の教科書には事実認定の根拠を明記して欲しいと思う。

[※参考]
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2006/12/post_880d.html http://www.kutl.kyushu-u.ac.jp/SubGroups/AMS/ http://wiredvision.jp/archives/200503/2005030808.html

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